マッサ・カンタービレ~ミュージック・スタディ~ 84

イタリアで過ごした日々を思い返すと、まず胸に浮かぶのは街角のジェラートの冷たさです。
だが、その奥でひそやかに輝くのは、カンノーロの記憶です。サクサクとした生地がほどけ、リコッタの甘さが静かに広がると、異国の空気までもが口の中に満ちていきました。
手にすれば重みがありながら、味わえば驚くほど軽やかで、いくつでも食べられそうなほど新鮮だった…。
あの味は、イタリアという土地があってこそ生まれる小さな奇跡だったのだと思います。
いつかまた、あの空の下で同じ一口を味わいたい。
その願いを、私はそっと記憶の頁にしまい込んでいます。

関連記事

PAGE TOP