以前、もう1種類の相対音感があると書きました。今日はそれについて書きます。
相対音感には基本となる音階があり、もう1種類の相対音感はこれの短音階が違うです。
以前、紹介した相対音感の基本の音階は下記のとおりです。
長調:「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」
短調:「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ♯・ラ(和声短音階)」
※短調の場合、和声短音階、自然短音階、旋律短音階があります。
もう1種類の相対音感の基本の音階は下記のとおりです。
長調:「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」
短調:「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ♭・シ♮・ド(和声短音階)」
※短調の場合、和声短音階、自然短音階、旋律短音階があります。
つまり、極論をいってしまうと全ての音階が「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」に聴こえているのです。
ただ、短調は♭や♮がついているので、長調と短調が同じに聴こえることはありません。
ピアノので下記の音階を弾くと
「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ♭・ド♯・レ(和声短音階)」
「ミ・ファ♯・ソ・ラ・シ・ド・レ♯・ミ(和声短音階)」
「ソ♯・ラ♯・シ・ド♯・レ♯・ミ・ファ♯♯・ソ(和声短音階)」
全てが下記のように聴こえます。
「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ♭・シ♮・ド(和声短音階)」
この種類の相対音感を持っている人は結構珍しいです。
また、完璧な絶対音感、完璧な相対音感、そして完璧な絶対音感と相対音感と両方を持っている人も珍しく、たいていの人は両方をなんとなく持っているといった状態なのです。それを訓練によって3種類のうち1種類の音感にするのです。つまり、音感は練習によって身につけていきます。
完璧な絶対音感を持っている人というのは、ヘルツの違いによっても左右されてしまいます。例えば、一昔前までは音のヘルツは440ヘルツでした。このヘルツで絶対音感の訓練をうけ、聴きなれている音楽家は現在の音の442ヘルツの演奏を聴くと気持ち悪くなってしまいます。また現在のベルリンフィルは445ヘルツ、現在のウィーンフィルは443ヘルツです。さらにバロック音楽は439ヘルツで演奏します。もっと正確にバロック音楽を演奏したいとなると415ヘルツにすることになります。バロック時代は415ヘルツで音楽を演奏していたからです。つまり、完璧な絶対音感を持っている人はこのヘルツの違いのことも考慮して音を聴かなくてはいけないということです。そして、訓練もしなくてはいけません。
また、相対音感の場合は、きちんと訓練をすることによっては、聴音をしたり、新曲視唱をしたりするのが容易になります。つまり、第一に練習の必要な音感ということになります。
軽薄で専門的なソルフェージュの知識のない音楽指導者は生徒さんに音痴ということを平気に言ってしまうことがあります。
私には、その音楽指導者の言葉は信じられないことであり、さらに私はその音楽指導者の能力を疑ってしまいます。なぜなら、人によって持っている音感の種類が違い、また、複数を持っているのであれば、どの種類の音感の傾向が強いのか判断することが必要になるからです。それにより、訓練の仕方が変わるのです。
例えば、音楽指導者がピアノでト長調(G-dur)の「ソ・シ・レ」を弾いたとします。
絶対音感の持ち主は「ソ・シ・レ」と音を判断します。
相対音感の持ち主は「ド・ミ・ソ」と音を判断します。
もしこの音楽指導者が相対音感の知識がなければ、相対音感の人が言った音は違うと言い続けることになるでしょう。そして、この相対音感の人を音痴と判定するでしょう。
また、この音楽指導者が絶対音感のヘルツに対する反応の知識がなければ、例えば、「ソ・シ・レ」の音を聴いた絶対音感の持ち主が440ヘルツで訓練を受け聴きなれていたとし、この絶対音感の持ち主がこの音を歌ったときには440ヘルツの「ソ・シ・レ」の音を歌います。そして、ピアノが442ヘルツの「ソ・シ・レ」の音であれば、この絶対音感の持ち主の「ソ・シ・レ」は少し低い音になってしまいます。この音楽指導者は音痴と判定するでしょう。この絶対音感の持ち主は音痴ではなく、ただ訓練をやり直す必要があり、ヘルツに対する知識を得ることも必要です。
つまり絶対音感も相対音感も、きちんとした知識と教養で対応するべきなのです。そうすれば、非常に優れた音楽家になるための基礎が修得できると私は考えています。
それではまた、ciao ciao!!