ローマにおいて、バロック期のイタリア人歌手には特別な性質がありました。それは声楽作品に描かれている感情、もしくは登場人物の感情をごく自然に、非常に現実主義的に表現していました。声楽様式にある種の音の強弱を必然的にもたらす際立ったアクセントと音節に分けた際立った発音を導入し、心の中の激しい動きや感情…苛立ち、軽蔑、喜び、失望、歓喜…など様々な感情表現ができました。バロック期のイタリア人歌手は技巧的な表現方法にも情熱的な表情を付け加えることができました。それは他の者が真似のできない歌唱方法でした。バロック期のイタリア人歌手には後年のヴェリズモ音楽に通じるものがすでにあったと思う今日此の頃です。