テノールの歴史3!!!!

16世紀の中頃からイタリアでは、ナポリで知られていたアジリタ唱法が実践され始めました。
アジリタ唱法とは1つの音に対して数個の細かな、様々な音符を重ねて歌唱していく唱法です。それを歌手が歌唱しながら楽譜の音や音楽をもとに即興で作曲していきます。つまり、元の音楽に即興で装飾をしていく唱法ということです。
そして、16世紀のポリフォニー音楽でイタリア人歌手たちはその唱法を競うように実践していきました。なぜなら、声楽面の誇示と対位法面の誇示を期待していたからです。つまり、歌手として自分が非常に優れていることを証明できたのです。ポリフォニー音楽の演奏における競争の風潮はやがて度の過ぎるものとなっていきました。その唱法は理論上、ソプラノのような高い声種が適していました。しかし、低い声種がパッセージの即興を行いつつ高音域までを侵し、でしゃばり過ぎるようにもなり、また同時に行われる多様な即興は不協和音も作り出すようになったのです。
その中で16世紀の末期に、テノール歌手でもあり作曲家であったヤコポ・ペーリとジュリオ・カッチーニがモノディーという独唱形式を確立しました。モノディーとは言葉のアクセント、イントネーション、声の抑揚、話し言葉のリズムを音や旋律に乗せ、それを和声伴奏によって支えるシンプルな声楽様式です。彼らはその声楽様式を使用して、ペーリは「ダフネ」や「エウリディーチェ」を作曲、カッチーニは「チェファロの誘拐」や「エウリディーチェ」を作曲しました。これらのモノディーでの作品は聴衆の感動を呼び起こしました。そして、ペーリやカッチーニの作品はオペラの誕生でもあったのです。
テノール歌手が新しい声楽様式を創り出したのです。
それでは、また次回!!

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