私はイタリア声楽作品と日本声楽作品(山田流箏曲を含む)を融合した「日本音楽のしらべ」を企画・演出・演奏をしたとき、1つのコンサートでベル・カント唱法と日本伝統歌唱法を往来しました。そして、テノール歌手でもあり、山田流箏曲の奏者でものある私にとって非常に興味深いことを改めて気づかされたように感じました。
「ん…」と思う方もいると思うのですが、現在の歌謡曲、学校の合唱、J-pop、演歌などは西洋音楽の発声法・歌唱法を基本としています。日本伝統歌唱法が使われていないように思います。また西洋音楽の発声法・歌唱法はイタリア式のものが基本です。
それでは、どんな違いがあるのか考えていみると、声を響かせる対象が違うのです。
西洋の場合、石造りの建物で発展してきたので、声を石に響かせるように発します。一方、日本の場合は木造建築で発達してきたので、声を木に響かせるように発します。そうすると西洋の歌唱法は軽やかに声を発し、声が勝手にホール全体を鳴り響かせるようにします。日本伝統歌唱は、まるで地鳴りをさせるように、声が地を這って行くように、自分で声を響かせるようにします。このような感覚の違いがあります。
それと西洋の歌唱法はヴィブラートのある歌声が非常に好まれるのに対して(作品の種類によって好まれないときはあります)、日本伝統歌唱法はこのヴィブラートのある声はあまり好まれなく、張り詰めたピーンとしたままの声が好まれるそうです。
私は、まだ様々な違いはあるように感じています。
ただ良い声、美しい声、かっこいい声を求めているところは共通しています。
それでは、ciao ciao!!